ギャンブル依存症研究で見えてきたこと
ギャンブル依存症研究で見えてきたこと―筑波大学准教授 森田展彰氏と語る
なぜ人はギャンブル依存症になるのか?
どのように重症化するのか?
家族はどうすればよいのか?
その研究結果をお聞きする勉強会を開催しました。
森田准教授が語っている内容には、学術的な裏付けがあるものと、あくまで個人的な意見の範疇を出ない部分が混在しており、そのあたりの「区分け」は必要なのですが、非常に示唆に富む内容ですね。個人的に非常に興味深かった部分を以下挙げておきます。
1.今後は、お金を貸すような場所でギャンブル依存症の情報提供を義務づけるなどの対策が必要だと考える。タバコのパッケージに健康を損なう警告が書かれているのと同様に。
2.マッチョな価値観で負けを認めたくなかったり、弱音が吐けなかったりという考え方には脆さがある。自分のある種の諦め、弱さを認めるということができると極端なところに行かない。
3.アディクションは医療的な問題であると同時に、生き方の病としても考えられている。しかしそのあたりの話が日本では理解されていない。
4.DSM5で、ギャンブル依存症には自然治癒があるとされていたが本当か?
答:どういう被験者を集めたかによるが、自然治癒があるという結果も出ている。そのあたりはアルコールでも議論がなされているところ。
5.カジノ法案で依存症対策として、家族から申告があったら入れないというものがあるが全く有効性が感じられない。家族はギャンブルに気づくことができない。
6.カジノ法案で入場料を上げたら抑制になるという対策があがっているが全くばかばかしい。何百万も賭けて負けて取り戻したくなる人が数万の入場料をけちっていかなくなるわけがない。
7.カジノができたからといって依存症者の数が増えたり減ったりはしないと思う。
8.依存症問題が始まったときの相談・援助体制について。依存症については、相談先が不明、世間体が気になるなどで相談するタイミングが遅れる。
DSMのコメント
実は、このあたりがギャンブル依存症を語る上で、この1年くらいの間に起ったもっとも大きな前提の変化です。
DSMというのは、アメリカの精神医学会が発行している診断マニュアル書なのですが、昨年、それまで使われていたマニュアルに大きな改定が行われました。
日本では未だ旧マニュアルで描かれていた「進行性かつ不可逆な病である」という古い認識に基づいた表現が使われる事が多いですが、2013年の改定ではこの表記は削除され、依存症は自然治癒もある(即ち、進行性とも限らず、また可逆な病である)という定義がなされています。
これはギャンブル依存症を論議する大前提として、非常に大きな変更点であるといえます。
森田准教授はさらにそこから、「依存から回復したとしても、一度依存化した者はその後、正しく賭博に参加は出来ない」とされてきたこれまでの精神医療の定説の中で、「回復者であっても正しく賭博に参加できるのだ」という新しい論議についても言及しています。
この辺は、同様に国内で最新のギャンブル依存症研究を行っている、久里浜医療センターの河本泰信医師なども、別所で行われたセミナー等で言及をしている部分でもあります。
DSM5は未だ日本語化されておらず、国内の医療関係者ですら未だ多くが古いバージョンに基づいた論議を行いがちなのですが、賛成派も反対派も、これらを語る上では原文にあたるくらいの最低限の努力はしなければなりません。
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