確率計算8.4 吸収壁のある有限段のランダムウォーク
吸収壁のある有限段のランダムウォークモデルでの確率計算です。
打つ回数M(>元手n)を予め決め、元手n円で初め、途中で目標利益N円に達するか、元手がなくなったら止め、そうで無い場合は予定回数に達したら、勝ってても負けていても止めるものとします。
このようなモデルは吸収壁のある有限段のランダムウォークと呼ばれてます。
このモデルは、勝った時は+1、負けた時は-1とし、斉次方程式を解くのが基本となります。
従って、大当たり確率pの時、1/p回打つのを1回の試行の単位とし、一回の初当たりで獲得する玉を単位金額とします。
出玉は連チャン回数やラウンド数の分布により変動しますが、ここでは平均値を使用し一定とします。
8.4.1 大当たり回数の分布計算
1/p回の試行でh回の大当たりを引く確率をP(h)とすると、P(h)は二項分布ですから、
P(0)=(1-p)^(1/p)≒1/e ここにeは自然数(1+1/2!+1/3!+・・・=2.71828)
P(1)=(1/p)*p*(1-p)^(1/p-1)=(1-p)^(1/p)/(1/p-1)≒1/e
P(2)=1/2*(1-p)^(1/p-1)≒1/(2*e)
P(3)=1/6*(1-2p)*(1-p)^(1/p-2)≒1/(6*e)
P(4)=1-P(0)-P(1)-P(2)-P(3)≒(3*e-8)/(3*e)
P(4)≪P(3)に付き、P(3)=1-P(0)-P(1)-P(2)≒(2*e-5)/(2*e)、P(h)=0(h>3)としました。
3に抑えたのは、後で3次方程式を解くためです。
4次方程式は殆どとけません。3次方程式も解けませんが、3個解の内1個がわかりますので、2次方程式に分解できますので解けます。
8.4.2 有限段のランダムウォーク
k回目の試行について考えると、
P(0)の時持ち金-1、P(1)の時持ち金+0、P(2)の時持ち金+1、P(3)の時持ち金+2となります。
k回目で持ち金n円の時、残りM-kで長者になる確率(前向き確率)をu(n,k)、
k回目で持ち金n円の時、残りM-kで破産する確率(後向き確率)をb(n,k)、
とすると、このランダムウォークは、下記の再帰式を満たします。
u(n,k)=P(3)*u(n+2,k+1)+P(2)*u(n+1,k+1)+P(1)*u(n,k+1)+P(0)*u(n-1,k+1)
u(0,M)=0、u(N,M)=1
b(n,k)=P(3)*b(n+2,k+1)+P(2)*b(n+1,k+1)+P(1)*b(n,k+1)+P(0)*b(n-1,k+1)
b(0,M)=1、b(N,M)=0
8.4.3 無限段のランダムウォークでの試行の平均回数と標準偏差
https://qir.kyushu-u.ac.jp/dspace/bitstream/2324/1072/4/KJ00000704197-00001.pdf
を参考に無限段のランダムウォークでの試行の平均回数と標準偏差を求めます。
長者か破産となる平均試行回数K(n)、
K(n)=(λ+1)/(λ-1)*(n-N*(1-λ^n)/(1-λ^N)
長者か破産となる試行回数の標準偏差S(n)、
S(n)^2=W(n)-W(N)*(1-λ^n)/(1-λ^N)-K(n)^2
ここに、q=1-pとして、
W(n)=-n/(p-q)^2*(2*N*(1+λ^n)/(1-λ^N)-n)-(1/(p-q)+1/(p-q)^3)*n
p=1/(1+λ)=22.58%、p-q=2*p-1=-54.84%
平均試行回数の計算
横軸をn、縦軸をNとして、K(n)を計算しました。
N/n 1 2 3 4 5 6
2 1.00
3 1.49 2.15
4 1.69 3.08 3.38
5 1.78 3.44 4.71 4.65
6 1.81 3.57 5.21 6.37 5.93
7 1.82 3.62 5.38 6.98 8.03 7.22
8 1.82 3.64 5.44 7.19 8.76 9.70
9 1.82 3.64 5.46 7.26 9.00 10.53
10 1.82 3.65 5.47 7.28 9.08 10.81
標準偏差の計算
横軸をn、縦軸をNとして、S(n)を計算しました。
N/n 1 2 3 4 5 6
2 1.41
3 2.01 2.35
4 2.41 3.08 3.31
5 2.62 3.53 4.00 4.28
6 2.73 3.77 4.44 4.85 5.22
7 2.78 3.89 4.67 5.22 5.63 6.15
8 2.80 3.94 4.78 5.44 5.93 6.36
9 2.80 3.96 4.83 5.54 6.12 6.57
10 2.81 3.97 4.85 5.59 6.21 6.73
8.4.4 打ち止め回数到達時の長者か破産確率
打ち止め回数Mにまでに、長者か破産になっている確率T(n)を求めます。
無限段の長者か破産となる試行回数の確率分布を正規分布と想定すると、
T(n)=NORMDIST(M,K(n),S(n),TRUE)
ここに、NORMDIST(M,K(n),S(n),TRUE)は平均値K(n)、標準偏差S(n)の正規分布の-∞からMまでの累積を計算するEXCELの関数です。
M=∞の時は無限段のランダムウォークとなり、T(n)=1となります。
M=n+mとし、mを変化させて長者か破産になっている確率T(n)を計算します。
持ち金+15回程度の試行を行わなければ長者か破産に収束しません。
短時間の遊戯だと収束は難しいです。
m=1
N/n 1 2 3 4 5 6
2 76.0%
3 60.1 64.1%
4 55.1 49.0 57.4%
5 53.4 45.0 42.9 53.3%
6 52.8 43.9 39.3 38.9 50.5%
7 52.6 43.6 38.4 35.2 35.9 48.6%
8 52.5 43.6 38.2 34.4 32.1 33.6%
9 52.5 43.5 38.1 34.2 31.2 29.5%
10 52.5 43.5 38.1 34.1 31.0 28.6%
m=2
N/n 1 2 3 4 5 6
2 92.1%
3 77.4 78.4%
4 70.6 61.8 68.8%
5 68.0 56.3 52.9 62.4%
6 66.9 54.5 48.2 47.0 58.1%
7 66.5 53.9 46.8 42.6 42.7 55.1%
8 66.3 53.7 46.3 41.3 38.4 39.5%
9 66.3 53.6 46.2 41.0 37.2 35.0%
10 66.3 53.6 46.2 40.9 36.9 33.8%
m=3
N/n 1 2 3 4 5 6
2 98.3%
3 89.4 88.7%
4 83.1 73.4 78.5%
5 80.2 67.1 62.6 70.9%
6 78.9 64.7 57.1 55.2 65.4%
7 78.4 63.8 55.3 50.2 49.8 61.4%
8 78.2 63.5 54.7 48.6 44.9 45.6%
9 78.1 63.4 54.4 48.1 43.5 40.8%
10 78.1 63.4 54.4 48.0 43.1 39.4%
m=5
N/n 1 2 3 4 5 6
2 100.0%
3 98.8 98.0%
4 96.3 89.9 91.8%
5 94.6 84.4 79.4 84.6%
6 93.8 81.8 73.6 70.6 78.2%
7 93.4 80.8 71.3 65.1 63.7 73.1%
8 93.2 80.3 70.4 63.0 58.3 58.1 69.0%
9 93.2 80.2 70.0 62.3 56.5 52.8 53.6%
10 93.2 80.1 69.9 62.1 55.9 51.1 48.3%
m=10
N/n 1 2 3 4 5 6
2 100.0%
3 100.0 100.0%
4 100.0 99.8 99.8%
5 100.0 99.2 98.1 98.6%
6 100.0 98.7 96.1 94.2 95.9%
7 100.0 98.4 94.9 91.1 89.2 92.3%
8 99.9 98.3 94.3 89.5 85.4 83.9%
9 99.9 98.3 94.1 88.8 83.7 79.7%
10 99.9 98.2 94.0 88.5 83.0 78.0%
m=15
N/n 1 2 3 4 5 6
2 100.0%
3 100.0 100.0%
4 100.0 100.0 100.0%
5 100.0 100.0 100.0 100.0%
6 100.0 100.0 99.8 99.5 99.6%
7 100.0 100.0 99.7 98.9 98.3 98.8%
8 100.0 100.0 99.6 98.5 97.1 96.2%
9 100.0 100.0 99.5 98.3 96.4 94.4%
10 100.0 100.0 99.5 98.2 96.1 93.5%
8.4.5 打ち止め回数到達時の確率
打ち止め回数Mにまでに、長者となっている確率U(n)、
U(n)=(1-λ^n)/(1-λ^N)*T(n)
打ち止め回数Mにまでに、破産しているB(n)、
B(n)=(λ^n-λ^N)/(1-λ^N)*T(n)
打ち止め回数M到達時に長者でも破産でもない確率C(n)、
C(n)=1-T(n)
8.4.6 期待収支の計算
打ち止め回数M到達時に長者でも破産でもない時の平均元手はnですので、
このランダムウォークでの期待収支D(n)は、
D(n)=(N-n)*U(n)-n*B(n)+0*C(n)=(N*(1-λ^n)/(1-λ^N)-n)*T(n)
即ち、無限段の収支(N*(1-λ^n)/(1-λ^N)-n)にT(n)を掛けたものになります。
横軸をn、縦軸をNとして、B(n)を計算しました。
無限段の期待収支
1 2 3 4 5 6
2 -0.55
3 -0.81 -1.18
4 -0.93 -1.69 -1.85
5 -0.97 -1.89 -2.58 -2.55
6 -0.99 -1.96 -2.85 -3.49 -3.25
7 -1.00 -1.99 -2.95 -3.83 -4.41 -3.96
8 -1.00 -2.00 -2.98 -3.94 -4.80 -5.32
9 -1.00 -2.00 -2.99 -3.98 -4.94 -5.78
10 -1.00 -2.00 -3.00 -3.99 -4.98 -5.93
M=n+1の期待収支
1 2 3 4 5 6
2 -0.42
3 -0.49 -0.76
4 -0.51 -0.83 -1.06
5 -0.52 -0.85 -1.11 -1.36
6 -0.52 -0.86 -1.12 -1.36 -1.64
7 -0.52 -0.87 -1.13 -1.35 -1.58 -1.92
8 -0.52 -0.87 -1.14 -1.35 -1.54 -1.79
9 -0.53 -0.87 -1.14 -1.36 -1.54 -1.71
10 -0.53 -0.87 -1.14 -1.36 -1.54 -1.69
M=n+5の期待収支
1 2 3 4 5 6
2 -0.55
3 -0.80 -1.16
4 -0.90 -1.52 -1.70
5 -0.92 -1.59 -2.05 -2.16
6 -0.93 -1.60 -2.10 -2.47 -2.54
7 -0.93 -1.60 -2.10 -2.49 -2.80 -2.89
8 -0.93 -1.60 -2.10 -2.49 -2.80 -3.09
9 -0.93 -1.60 -2.10 -2.48 -2.79 -3.05
10 -0.93 -1.60 -2.10 -2.48 -2.78 -3.03
M=n+10の期待収支
1 2 3 4 5 6
2 -0.55
3 -0.81 -1.18
4 -0.93 -1.68 -1.85
5 -0.97 -1.87 -2.53 -2.51
6 -0.99 -1.94 -2.74 -3.29 -3.12
7 -1.00 -1.96 -2.80 -3.49 -3.93 -3.66
8 -1.00 -1.96 -2.81 -3.53 -4.10 -4.46
9 -1.00 -1.96 -2.82 -3.54 -4.13 -4.61
10 -1.00 -1.96 -2.82 -3.54 -4.13 -4.62
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